ドリフェス武道館を終えて、アイカツのオタクが思うこと

2016年3月、アイカツの放送が終わった。私にとってアイカツは、青春を捧げた大切なコンテンツの1つだ。アルバイト代をデータカードダスにつぎ込み、ライブツアーに通ったり、ミュージックビデオを見ながらダンスを練習したり、グッズやCDを買ったり、アイカツを追いかけた日々は本当に楽しかった。

 

アイカツ放送終了直後には、パシフィコ横浜で集大成の1つとも言えるライブが行われた。るかさんが号泣しながらスタートダッシュセンセーションを歌う姿に、オタクは全員泣き崩れたものだ。本当に幸福で、懐かしい思い出だ。

 

アイカツが終わった後すぐ、アイカツスターズが始まった。アイカツスターズは面白かった。キャラクターは個性的で、ドレスのデザインも可愛く、曲も粒ぞろいだ。データカードダスの筐体も改良され、画面は大きく明るく、キャラクターの表情も豊かになった。

 

でもそれは、アイカツスターズであり、アイカツではなかった。そりゃそうだ。アイカツスターズは何も悪くなく、自分が悪いことは理解していた。私はアイカツスターズを指差して、これはアイカツではない!と泣き喚くアイカツ老害になっていたのだ。今思えば、例えるならお母さんが亡くなってすぐにお父さんが新しい再婚相手を連れて来た時のような、複雑な気持ちだったのだと思う。(今では新しいお母さんも大好き!)

 

アイカツを失い、アイカツスターズを受け入れらなかった私は、鬱屈した日々を過ごしていた。次第に周りのアイカツのオタクはアイカツスターズに順応しだして、心細い気持ちにもなった。

 

そんな時、ドリフェスの存在を思い出した。アイカツが放送されていた頃から、アプリのCMを見ていたのでドリフェスのことは知っていた。調べてみると、どうもアイカツのスタッフが多く関わっているらしい。データカードダスの筐体も流用されるようだ。

 

2016年9月末、アニメイトチャンネルでドリフェスの先行配信があった。見た。

 

「目指すはデビューをかけたドリームフェスティバル!ドリフェス!始まります!」

 

ア、アイカツだ……。オープニングから呆気にとられた。いちごちゃんやあかりちゃんの「アイカツ!始まります!」を意識して作られたものであることはすぐにわかった。そのような点は1話だけでも複数箇所見られた。三神さんの着信音。カードを使って変身していく男の子たち。でも、うまく言えないのだが、そういううわべだけのところじゃなくて、アイドルとしての精神性が、アイカツのそれだったのだ。本当に、うまく説明できないのだけれど。

 

1話が終わって、放心した。アイカツが姿を変えてもう一度私に会いに来てくれたのだと、感極まって泣いた。

 

(あと、今回の要旨とはずれるけれど、1話のステージで披露されたグローリーストーリーもめちゃくちゃよかった。エンディングで作詞作曲が奥村愛子さんであることを確認して納得した。そりゃ好きだわ、戦国鍋だもん……。あとから知ったことだが、ダンスの振り付けも戦国鍋の人だったらしい。古臭いメロディと妙ちくりんなダンスが道理で魂に馴染んだはずだった。)

 

ドリフェスデータカードダス筐体の稼働は、アニメのスタートよりあとだった。私は稼働日を心待ちにしていた。データカードダスに、かつて求めていた魂の救済を望んだ。そして、それが叶うと確信していた。

 

稼働してすぐ、100円玉をごっそり抱えて筐体に駆けつけた。親の顔より見た筐体だ。久しぶりの再会だったが、相変わらず手に馴染んだ。100円玉を投入して排出された箔押しのキラキラのカードは、私が求めていたそれだった。

 

10回ほどプレイした時だった。

 

 

純哉くんのサインカードが排出された。アイカツ2015年シリーズ第3弾で羽衣プリンセスティアラを排出した時と同じくらい興奮した。ドリフェスについていこうと決意した瞬間だ。

 

その後も、アイカツドリフェスの繋がりを感じさせる場面は何度もあった。私がすぐ思い出せるところで言えば、いつきと千弦のW-MaSKatは神崎美月と夏樹みくるのWMを感じさせたし、千弦が斧を構える場面は明らかにアイカツを意識している。最終回でDear Dreamがライブをした会場はムーンライズスタジアムであり、神崎美月やいちごちゃんがライブをしたスターライズスタジアムを彷彿とさせた。

 

特に嬉しかったのは、2017年12月、DMMシアターでアイカツドリフェスのイリュージョンライブが同時期にあった時の純哉くんのツイートだ。

 

 

明言は避けたものの、「同じ劇場の公演を見学した。アイドルオーラがすごかった。俺たちももっと輝かないと!」と、純哉くんが言ってくれたことが本当に嬉しかった。アイカツドリフェスの世界はそばにあるんだ……と感じることができた。

 

あともう1つ嬉しかったのは、2018年2月、太田将熙くんが、アイカツ武道館に行ったらしいツイートをしてくれたことだ。

 

 

アイカツ武道館は、アイカツの歌を歌っているSTAR☆ANISとAIKATSU☆STARS! の卒業公演に当たる。太田くんはたぶんアイカツを見ていないだろうけれど、「長い時間をかけて創り上げてきた大切な空間が広がっていて素敵でした」と言ってくれたことがアイカツファンとして本当に嬉しかった。

 

同時期の出来事で、太田くんと言えば、ユメノコドウツアーのMCでの一言が心に残っている。たぶん愛知公演だったと思う。

 

「おじいちゃんになるまでDear Dreamでいたい」

 

私はそれを聞いたとき、ハッとした。その一言は、アイカツ125話「あこがれの向こう側」でソレイユのみんなが口にした「(ソレイユを)ずっと長く続けていきたいな。おばあちゃんになってもね」と重なって聞こえたからだ。太田くんは全く意識していないだろうから、これは私が勝手に思っただけなんだけど。

 

太田くんは、今思えば、武道館の有無はともかく、コンテンツが終了することは知っていたのだと思う。それでもそういうふうに言ってくれた。それも嬉しかった。

 

2018年2月当時、ファンはみんなドリフェスが終わるんじゃないかと心配していた。ユメノコドウツアー最終日、パシフィコ横浜にて、最後まで何か続報があるんじゃないかと期待したが、結局新しい情報は何もなかった。怖かった。私はただ、太田くんの言葉だけを信じた。終わるか終わらないかはともかく、太田くんは終わってほしくないと思っているということが支えだった。ライブが終わって、会場にALL FOR SMILE!のインストゥルメンタルが流れて、泣きながら、「絶対にみんなをもっと高く遠くまで連れていく」と歌った。決意表明だった。

 

そのあとすぐ、ドリフェスの終了と武道館でのラストライブが発表された。私は、アイカツと同じように武道館で卒業ライブができることを幸福に思ったが、それ以上に、アイカツに続いてまた武道館で大切なものを失うのだと茫然自失とした。

 

ドリフェスの終了に関して、後悔や責任感を感じたファンは少なくないだろう。ドリフェスはコンテンツの幅が広く、アニメ、アプリ、データカードダス、漫画、ライブ、様々なコラボやグッズ、CD、Blu-rayなど、全てに力を捧ぐことは困難だった。だからこそ、もっとどこかにお金を使っていたらドリフェスを続けられたんじゃないかと後悔したファンはいたはずだ。私自身も、データカードダスやライブやグッズにはそれなりにお金を使ったが、アプリはほとんど課金しなかったし、アニメのBlu-rayも購入しなかった。そのような後ろめたさを感じながら、武道館公演を迎えた。

 

しかしながら、武道館ライブはそんな後悔を吹き飛ばしてくれる、素晴らしいライブだった。キャストのみんなが、武道館ライブは勝ち取った努力の結果なのだと何度も繰り返し伝えてくれた。ファンは呪縛から解放された。

 

話は戻るが、アイカツドリフェスのライブに共通する点として、衣装をたくさん着替えてくれるところが好きだ。どちらも元々が着せ替えコンテンツであることを反映しているのだと思う。アイカツドリフェスも最後の武道館公演だというのに、新しい衣装をポンポン作って、私たちにお披露目してくれた。ゲームで集めて着せていた服が目の前にどんどん現れる興奮はなんとも計り知れない。

 

もう1つは、アイドルアニメのライブが、きちんとアイドルのクオリティで見られるところが好きだ。昨今のアイドルアニメコンテンツは声優にアイドルをやらせるけれど、アイカツドリフェスは違う。別に声優がアイドルをすることが悪いわけじゃない。けれど、やっぱり歌とダンスを本業の1つとしている人たちは、パフォーマンスのレベルが違って感じられた。

 

そして何より、ドリフェスの現場に行った時、アイカツのグッズを身につけている人が何人もいることが嬉しかった。アイカツのコートやカバンや財布を身につけたり、キーホルダーや缶バッジで控えめにアピールしたりしている人がいた。そういう人たちと、意味深な視線を送りあって渋いニヤリを交換するのは、趣があって良かった。もちろん、アイカツの現場でも逆のことがあった。

 

武道館を終えて、ドリフェスのこれからを考える。

 

アイカツは武道館卒業ライブの約1年後に、5thフェスティバルで歌唱の機会があった。本当に嬉しかったし大興奮したが、良くも悪くもそれは卒業後のお祭りのような公演で、もう二度と彼女たちの全力のパフォーマンスを見ることはできないんだ……ということがわかった瞬間でもあった。

 

今後、ドリフェスにもそういう機会が与えられる可能性はあると思う。その舞台はアミューズのお祭りのようなライブかもしれないし、防衛部みたいに何年か経ったあと次世代のドリフェスが描かれた際に先輩アイドルとして登場するかもしれない。でも、Dear DreamとKUROFUNEの、武道館以上のパフォーマンスはもう二度と見られないのだと思う。

 

でも、それでいいのだ。そう思える、最高を超えた武道館ライブだった。

 

今後私は、キャストのみんなを応援する責務があると考えている。貴重な若い時間を、アイカツドリフェスという作品に注いでくれた。みんな仕事以上の愛情と熱意を持って作品に取り組んでくれたように感じる。彼・彼女たちの中に、まあ変わった子はいたかもしれないけれど、嫌な子や悪い子は一人もいなかった。最初から最後まで、まっすぐ真面目にアイドルをしてくれた。本当にキャストに恵まれたと思う。私が好きだったのは、STAR☆ANISで、AIKATSU☆STARS!で、Deae Dreamで、KUROFUNEなんだけど、コンテンツが終わった今、彼・彼女たち自身のことも大好きになってしまった。応援したいし、しなきゃいけないと思う。こんなにたくさん幸せをもらってしまったのだから。

 

武道館ライブが終わって、会場にまたALL FOR SMILE!が流れた。パシフィコのときと同じように、泣きながら大声で歌った。少し違っていたのは、私はこの時、ドリフェスというよりはキャストのみんなのことを考えていた。ドリフェスは終わるけど、関わってくれたみんなのことをこれからも応援していくという、新たな決意表明だった。

 

そして、欲を言えば、アイカツドリフェスに続く新しいアイドルコンテンツに出会いたいと願う。アイカツを失った時はただ落ち込むだけだったけれど、そのあとドリフェスに救われた。今の私は、失ってもまた立ち直ることができるのだと、再生を信じている。

 

バンダイさん、加藤陽一さん、臼倉竜太郎さん、その他の偉い人たち、どうかもう一度、心から信頼して応援できるアイドルコンテンツを、どうぞよろしくお願いします。アイカツのオタクと、ドリフェスのファンは、いつまでも待っています。

 

読んでくれてありがとうございました。